儲かる市民マラソンと、静かに消えていく市民マラソンの決定的な違いとは?

事例

NAHAマラソンとおきなわマラソンを、マーケター視点で読み解く

昨日、私はNAHAマラソンに

出場しました。

マラソン、唯一、趣味として残してること

朝から頭使いまくってだんだん思考力が

低くなってきた夕方、走ると

頭の中がすごくすっきり&

体動かしてると良いアイデアが

出やすくなるのでおススメですよ

昨日のマラソン自体は、完全に練習不足で

どうにか時間内にゴールに

たどり着いた感じでした。

NAHAマラソン、出たり応援したりしたことある人は

わかると思うんですが、

毎年2万人以上が走り、

沿道にはエイサー、

地元の子どもたち、

ハイタッチの列。

とにかく42.195キロ、

ずっと沿道の応援が途切れない

12月の沖縄を象徴する「巨大なお祭り」

になってるんですよね。

昨日のNAHAマラソンスタート前の様子  すごい人の数  最後尾の参加者はスタートラインまで30分くらいはかかります

全国でもトップクラスの人気の

市民マラソン大会になってるのも

うなづけます。

普段、他人様から応援されることの

少ない(というかほとんどない)生活を

送ってる私ですが、毎年、この日一日だけは

知らない人たちが応援してくれるのも

楽しいポイントです。

で、私は2月に同じ沖縄で開催される

「おきなわマラソン」にも何度も

出てました。

ところが、先日、ニュースで報じられたのが

次回、2027年大会の休止

走ってる身としては、どちらも同じように

盛り上がってるように感じてました。

コースに嘉手納基地の中を通るルートがあり

中ではアメリカ人の皆さんが応援してくれる

唯一無二の市民マラソン。

START・GOALの沖縄市を中心に

近隣の市町村全体で盛り上がってるように

見えてたのに、なんで???

この差は何だ?

なぜ片方は盛り上がり続け、

片方は幕を下ろしたのか?

今回は、この点をマーケティング視点から考えて

見たいと思います。

ランナー目線での違いはなに?

走ってる側としては、

NAHAマラソンもおきなわマラソンも、

受け取る価値=ベネフィットは

どちらも最高レベルなんですよ。

・沿道の応援に背中を押される嬉しさ

・エイサーやチアに元気をもらえる一体感

・知らない人から「頑張れ!」と

言われる非日常の幸福

・沖縄ならではの景色と空気

・特別な体験(嘉手納基地内.etc)

ランナーが感じる「価値」という意味では、

正直、両方ともめちゃくちゃ強い大会です。

この価値、沖縄の外(県外・海外)から

参加のランナーにとっては、どちらの大会も

さらに高い価値だと思います。

だからこそ、

おきなわマラソン休止のニュースを見たとき、

え?なんで?っていう違和感があったんです。

「価値(ベネフィット)では負けてないのに、

 なぜ消えてしまったのか?」

ここを深掘りしないと、

マーケティング視点では「本質」

にたどり着けません。

ベネフィットは互角。じゃあ何が違ったの?

最初に結論

市民マラソンの収支構造には、

大きな特徴があります。それは・・・

ランナー一人当たりにかかる赤字

どれだけ美しく埋められるか

この一点が「大会の生死」を左右します。

なぜなら——

市民マラソンというイベントは構造上、

参加料では絶対にペイしない

運営コストの方が圧倒的に高い

不足分(=赤字)をスポンサー・行政・地域経済が埋めて初めて成立する

というビジネスモデルになっているからです。

これを知らないと、

表面の「盛り上がり」「楽しさ」だけ見て

本質を見誤ります。

ランナー一人当たりの赤字ってなに?

ランナー一人当たりの赤字とは

要するに

ランナー一人にかかる経費すべて-ランナーが支払う参加代金=赤字

ってことです。

じゃあ、いくら赤字を埋めるの?って思いますよね。

実際の事例で見てみましょう。

東京マラソン

国内の市民マラソン大会で

唯一、明確な運営コストを出してる大会が

東京マラソンです。

東京都の公開情報で見られます。

大会総予算(平均値)195億円

ランナー数 36,000人

一人当たりの運営コストは

195億 ÷ 36,000人 = 約54,000円(=5.4万円)

ってことですよね。

では、ランナーが払う参加料は?

19,800円(約2万円)

です。

つまり5.4万―2万=3.4万

34,000円の不足←ランナー一人当たりの赤字

この不足分を協賛金・行政補助・寄付・放映権 で埋めているモデル

ということになります。

この東京マラソンのモデルを参考にすると

市民マラソンの運営費モデルの本質=

参加費では絶対にペイしない仕組み

つまり

参加料は全体コストの2~3割

残りの7~8割はスポンサー・行政負担・物品協賛・寄付で賄う

という収支構造になっているはずです。

おそらく、中規模小規模になればなるほど

この比率はもっと極端に「スポンサー依存」

になってると推測できます。

NAHAマラソン

NAHAマラソンを見てみましょう

以下のエビデンスから「赤字補填構造が強い」

ことがわかります。

※公的機関の資料や報道ベースでのエビデンスです

・経済効果 19.8億円 と試算

・これにより行政が「継続理由」を持つ

・協賛企業も多い(銀行、通信、航空、製薬など)

・那覇市が主催として「政治的に守られている」

おそらく東京マラソンほどではないが、

ランナー1人あたり不足分を埋める財源を

安定して確保できる構造を持っている

と仮説を立てられます。

おきなわマラソン

では、おきなわマラソンはどうでしょう?

こちらも公開データは出てませんが、

構造としては

 「東京マラソンのように太い協賛構造を持たなかった」 と

推測されます。

エビデンスとしては
※公的機関の資料や報道ベースでのエビデンスです

・参加者が ピーク1.4万人 → 7,907人 まで半減

・物価高・人件費高騰で運営費が上昇

・スポンサー収入の伸びは不明瞭

・結果:2年連続で数千万円の赤字

つまりこうなります

ランナー1人あたりの不足分

(=東京でいう3.4万円部分)が大きくなった

   ↓

それを埋める「協賛・行政資金」が弱かった

  ↓

結果、構造的に持続不可能になった

これが、おきなわマラソンを継続できなくなった

NAHAマラソンとの違い

ベネフィットは同じ

収支構造の差

ということになります。

ではさらに、下記3つの分析軸で、

2つのマラソン大会を深堀してみましょう

参加者の軸:参加者数で赤字の総量を減らせたか?

参加料は収支の「上澄み」程度にしか過ぎない

ことは、説明した通り

とはいえ、マラソンイベントの経費は

ほとんどが「販管費」=

参加者数が多くても少なくても

かかる経費

であることを考えると

人数が減れば赤字の総量が増える

という構造が見えてきます。

おきなわマラソンは

参加者数が14,435人→ 7,907人に減少。

= 穴(赤字)が2倍に拡大したようなものです

NAHAマラソンは2万5,000人規模を維持。

= 赤字総量が低めに安定するため、

 収支構造が壊れにくい状態を保てています。

地域巻き込みの軸:地域が赤字解消を支える理由を持てたか?

NAHAマラソンの沿道は

「那覇市と近隣市町村全体の祭り」 になってます

商店

観光業

宿泊

報道

地域団体

関わってる人たちや会社

全員が「NAHAマラソンが盛り上がったほうが儲かる理由」

を持つ構造をうまく作れてます。

つまり、

地域もスポンサーも行政も

「赤字解消を支えるインセンティブ」が強い。

と言えますね。

一方、おきなわマラソンは

広域連合(沖縄市・うるま市・北谷町)が関与していたが、

責任の所在が分散し、

赤字を肩代わりする「主人公」が

NAHAマラソンと比較すると不明瞭だった。

と言えると思います。

運営ガバナンスの軸:いざ赤字になったとき、誰が責任を持つのか?

おきなわマラソンは

報道によると

「会計担当者の退職」

という局所的な出来事で立て直しが止まった。

と書かれています。

これは大規模イベントを企画運営する組織としては

かなり致命的、如実に

運営構造の弱さを露呈してしまっています。

NAHAマラソンは、那覇市長が協会会長という

「行政のトップの関与」が明確

これは構造上、大きな安心感につながります。

だから赤字や大規模警備、人件費の高騰があっても、

 続ける「正当性」「責任者」が明確な大会だと

言えますね。

つまり、

赤字をどう埋めるか?

どの規模で開催するか?

すべての判断が明確で速い組織構造

と言えます

結論

分析結果をまとめると

大会を生死を決めたのは

イベントの価値ではなく、

『赤字をどう埋めるか』という

裏側の構造です。

これが結論です。

ベネフィットは互角。

むしろどちらも素晴らしい。

それでも片方は消えた。

その理由は、

価値(顧客ベネフィット)で負けたのではなく、

構造(赤字処理の仕組み)で負けた から。

ということになりますね。

何を学ぶ?

いかがでしたでしょうか?

盛り上がるマラソン大会と

消えるマラソン大会

この対照的な事例から、

私たちがマーケティング発想で学ぶ点は

「価値の作り方」はもちろん重要、でも、

「価値の守り方」も同じくらい重要

ってこと。

実はこれ、イベントもビジネスも同じなんです。

「おいしいラーメンだから売れる」わけじゃない。

「良いサービスだから続く」わけじゃない。

構造が弱ければ、どれだけ顧客が喜んでも倒れるんです。

この、ビジネスを支える構造すべて、のことを

ビジネスモデル、と呼びます。

だから私たちが作るべきは:

・顧客が喜ぶ価値

これは当たり前ですが

ここにとどまらず

・まちが喜ぶ「経済効果構造」

・ステークホルダーが支える「協賛構造」

・継続できる「コスト設計」

・政治的に正当化できる「社会意義」

ここまで含めて自社の

ビジネスモデルを見直してみると

今まで気づいてなかった「構造」に

気付けるかもしれないです。

おきなわマラソンのように

「良いイベントが消えた」という現実を、

次のチャンスに変えられるのは

マーケティング発想を持ってる人だけです。

その意味においては

「人を動かすのは価値だけじゃない。

構造ごと巻き込んで初めて、人も地域も幸せになる」

これが今回の分析で見えた結論と言えます

最後に、このブログ読んで

ちょっとでもマラソン、面白いかも

と思った方、

来年は一緒に走りましょう。

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コメント

  1. つばさ より:

    すごく興味深かったです!
    今マルシェイベント企画中ですが、
    まさに運営以外の出店、地域、協賛企業をいかに巻き込む構造を作っていくかで継続できるかが変わってくるなと思いました。

    想いだけではビジネスは成り立たないんだなと改めて学ばさせていただきました。

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